実家を売却する手順や費用・後悔しないためのポイント



相続した実家を空き家のまま放置していると、固定資産税や管理費などを払い続けなければなりません。

「もっと高く売れたのでは?」「売却に時間がかかりすぎた」と後悔しないためにも、売却についての知識を身につけておくことが大切です。


この記事では、実家を売却する際の流れや費用について詳しく解説しています。スムーズに売却を進めるための方法やトラブルを避けるポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。



実家を売却する手順




相続した実家の売却を検討した場合、以下のとおりに、売却手続きを進めます。


1.相続登記

2.実家の査定

3.不動産会社と媒介契約を結ぶ

4.販売活動

5.買主と売買契約を結ぶ

6.実家を引き渡す


順番に詳しく見ていきましょう。



1.相続登記をする

実家を売却するには、まず相続登記を完了させる必要があります。相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、名義を相続人に変更する手続きのことです。


2024年4月以降、日本では相続登記が義務化されました。手続きを怠ると罰則が科される可能性があるため、

実家の相続が完了していても、相続登記が済んでいるかを必ず確認しましょう。


不動産を売却する際には、登記簿に所有者の名前を登録し、所有者を法的に明確にしておく必要があります。

相続登記を行うことで、不動産の所有者が誰であるかを法的に証明でき、売却もスムーズに進みます。相続登記の手続きは、司法書士に依頼するとスムーズです。


2.不動産会社に査定を依頼する


実家を売却する際には、不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。査定を通じて適正な価格を把握することで、売却活動をスムーズに進められます。


査定額とは、不動産会社が「この価格なら売れる」と考えた金額のことです。そのため、査定額が必ずしも売却価格になるわけではありません。


査定方法には、簡易査定と訪問査定の2種類があります。


簡易査定とは、不動産市場の相場や周辺の取引事例、物件情報をもとに簡易的に査定を行う方法です。手軽に依頼でき、短時間で結果が分かります。しかし、実際に物件を確認しないため、正確性に欠ける場合があり、大まかな価格を知りたいときに利用されます。


訪問査定は、不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、土地や建物の状態、周辺環境を詳しく調査したうえで行われる査定方法です。より正確な査定額を知ることができますが、担当者への訪問対応が必要です。本格的に売却を検討している場合に利用されます。


3.不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定結果が出たら、実家の売却を依頼する不動産会社を選びます。不動産会社に仲介を依頼する場合、売主と

不動産会社間の媒介契約が必要です。


媒介契約の期間は通常3か月で、期間内に売却が完了しない場合は、契約を再度結び延長することも可能です。この段階では、不動産会社に料金を支払う必要はありません。


媒介契約は、不動産会社がどのように売却活動をサポートするかを決めるもので、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。


媒介契約の違いは以下の5点にあります。


  • 複数の不動産会社に依頼できるか

  • 不動産会社を通さず直接取引が可能か

  • 契約期間は何か月なのか

  • 売却活動の進捗について報告があるか、また報告頻度はどの程度か

  • 指定流通機構(レインズ)への登録義務があるか


指定流通機構(レインズ)とは、不動産会社だけが見られる不動産情報システムのことです。売主側の不動産会社がレインズに物件情報を登録することで、多くの不動産会社の目に留まりやすくなります。


【媒介契約の比較表】


一般媒介契約

専任媒介契約

専属専任媒介契約

複数社への依頼

可能

不可

不可

自力での取引

可能

可能

不可

契約有効期間

法律上の制限はない(ただし、国土交通省の定める標準媒介契約約款では、3か月以内)

最長3か月

最長3か月

進捗報告の頻度

任意

2週間に1回以上

1週間に1回以上

指定流通機構(レインズ)の登録義務

なし

あり

(契約から7日以内)

あり

(契約から5日以内)

向いている人

・自力で売却活動を進めたい人

・複数の不動産会社に依頼したい人

・不動産会社と連携しながら売却活動を進めたい人

・自分でも売却活動をする可能性がある人。

・不動産会社に売却を任せたい人

・短期間で売却したい人。


媒介契約は、種類ごとに契約条件が異なるため、自身のニーズや売却計画に合ったものを選ぶことが大切です。



4.実家の販売活動を始める


契約を結んだら、いよいよ販売活動がスタートします。販売活動には、インターネットでの物件掲載やチラシの配布などがあります。基本的には不動産会社が行いますが、購入希望者が現れた場合は内見を実施するため、売主側も事前準備が必要です。


内見で大切なのは、物件をきれいに整えておくことです。家の印象がよくなることで、買い手の購入意思が高まる、または売却価格が上がる可能性があります。


長期間人が住んでいない空き家は、劣化が進みやすいため、換気や掃除を定期的に行うことが大切です。必要に応じて、プロのハウスクリーニングへの依頼も検討しましょう。


また、残留物が多い場合は片付けが必要です。とくに、大型家具・家電の処分には費用や手間、重要書類や小物の仕分けには時間がかかるため、計画的に進めるようにしましょう。


5.買主と売買契約を結ぶ


購入希望者から購入申込書を受け取った後、売主と買主で契約条件をすり合わせます。買主が購入の意思を固めたら、売買契約を結びましょう。


契約に先立ち、不動産会社が重要事項説明を行います。重要事項説明とは、物件の詳細や取引条件、法的リスクの説明を重要事項説明書に沿って行う手続きのことです。疑問点がある場合は、ここで必ず聞いておきましょう。


売主と買主が契約内容を確認し、双方が納得したうえで署名・押印します。買主から手付金を受け取ったら契約成立です。


6.実家を引き渡す


実家の引き渡し日を決め、当日までに引き渡せるように準備しておきましょう。引き渡し当日は、買主様が融資を受ける銀行もしくは不動産会社が設定した場所 (銀行等)で売主や買主、不動産会社などの関係者が集まり、残金の決済や司法書士による移転登記の手続きが行われます。


鍵を渡し、移転登記が完了すると、物件の所有権は正式に買主に移ります。この時点で、売主は物件に立ち入れなくなるため、事前に忘れものがないか確認しておきましょう。


こちらの記事では、不動産売買における仲介手数料について解説しています。計算方法や値引き交渉がおすすめできない理由も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。



実家の売却にかかる税金




実家を売却した際の手取り金額は、売却費用から諸経費を差し引いた額になります。諸経費のなかには、以下の5つの税金が含まれます。事前にいくら税金がかかるのか確認しておきましょう。


  • 相続税

  • 譲渡所得税

  • 印紙税

  • 登録免許税

  • 消費税



相続税

相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続した際に、その財産に課される税金です。生前に贈与された財産も対象となる場合があります。


相続税には基礎控除額があり「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。たとえば、配偶者1人と子ども3人の場合は、3,000万円+(600万円×4)=5,400万円となり、この金額以下の財産には相続税はかかりません。


ただし、被相続人が残したすべての財産が相続税の対象であり、不動産だけでなく、現金、預金、有価証券、

貴金属などにも相続税が課税されます。


相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日から10か月以内です。この期限内に、税務署に相続税の申告書を提出し、必要に応じて納税を行う必要があります。



譲渡所得税


譲渡所得税は、実家を売却して得た利益に対して課される税金で、所得税や住民税が含まれます。譲渡所得税は、売却した翌年に支払いが発生します。売却から時間が経ってからの支払いとなるため「忘れたころの譲渡所得税」ともいわれます。


譲渡所得税は、以下の式で計算します。


譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 売却にかかる諸費用)

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率


譲渡所得税の税率は、売却した不動産の所有期間によって異なります。所有期間5年を区切りとして、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つに分かれています。


短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下の場合)

税額=課税短期譲渡所得金額×39.63%(所得税30%・住民税9%・復興特別所得税0.63%)


長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年を超える場合)

税額=課税長期譲渡所得金額×20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)



印紙税


印紙税は、課税文書を作成した際に課される税金です。不動産を売却する際は、売買契約書がその対象となり、契約金額に応じて納める印紙税の額が異なります。印紙税は、契約書に印紙を貼付することで支払われる仕組みです。


売買契約書を2通作成する場合は、それぞれに印紙を貼る必要があります。通常、買主と売主がそれぞれ1通ずつ保管しますが、印紙税の負担は買主と売主で分担するのが一般的です。


なお、令和9年3月31日までの間、契約金額が10万円を超える場合は、税率が軽減されています。



登録免許税


登録免許税は、登記を行う際に支払う税金です。通常は、所有権移転登記にかかる登録免許税は買主が負担します。


しかし、売却する不動産に抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消しなければならず、売主は抵当権抹消登記のための税金を支払う必要があります。



消費税

日本では、商取引の際は消費税が加算される仕組みとなっています。実家を売却する際、不動産業者に支払う仲介手数料は、消費税の課税対象となります。


不動産仲介手数料は法律で上限が決まっており、その上限を超える金額を支払う必要はありません。不動産仲介手数料は軽減税率の対象外のため、標準税率10%が適用されます。


こちらの記事では、固定資産税の評価証明書について解説しています。見方や取得方法などの基本知識も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。




実家の売却で後悔しないために



実家を売却する際には、事前に押さえておきたい注意点やポイントがあります。売却後に「もっとよく考えればよかった」と後悔しないためにも、以下で詳しく見ていきましょう。



適切な売却タイミングを見極める


不動産価格は一定ではなく、社会情勢や需要の変化によって上下するため、売りどきが存在します。たとえば、金利の上昇や土地相場の変動といった外部要因や、買い手の需要が影響します。


売却が長期化すると、固定資産税や管理費などの維持費がかさみますが、焦って売却を急ぐのは危険です。不安にかられて、相場より大幅に安い価格で妥協してしまう可能性があります。


タイミング次第では「相場よりも高い価格で購入したい」という買い手が現れることも期待できるため、あまり焦らないようにしましょう。


大切なのは、納得感のある価格で、売りたい時期に売れることです。まずは入念に売却計画を立て、多くの見込み客に情報が届くように宣伝活動を行い、冷静に売却のタイミングを見計らいましょう。


こちらの記事では、抵当権について解説しています。根抵当権との違いや抹消手続きについても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。



遺言書の有無を確認する


実家を売却する際には、遺言書の有無の確認が大切です。遺言書が残されていた場合は、遺言書の記載内容にしたがって財産を分ける必要があります。誰が実家を相続するのかが記載されていれば、その人が単独で売却することも可能です。


遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。


公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成した遺言書のため、裁判所での検認手続きは不要です。一方で、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、公式な遺言書にするために裁判所で検認手続きを行う必要があります。


遺言書を探す方法として、以下の手順を試してみましょう。


  • 故人が付き合いのあった税理士や弁護士に聞く

  • 銀行に預けていないかを確認する

  • 家の中を探す

  • 近くの公証役場に聞きに行く


遺言書がなければ、遺産分割協議を行うことになります。



遺産分割の方法を決める


遺言書がない場合は、法定相続人が集まり、遺産分割協議を行います。遺産分割には以下の4つの方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。


・現物分割

遺産をそのままの形で分ける方法です。たとえば、実家をAさんが相続し、預金をBさんが相続するという形です。


現物分割では、実家を単独で相続した人が売却手続き全般を自由に進められます。ただし、実家の価値が大きい場合やほかの資産でバランスを取ることが難しい場合、相続人間でトラブルが発生しやすくなります。


・換価分割

実家を売却し、得た現金を法定相続分や協議で決めた割合で分ける方法です。換価分割は、売却代金を均等に分配できるため、公平性を保ちやすいのが特徴です。


ただし、不動産を共有名義にすることが多いため、売却の際に全員の同意を得なければなりません。1人でも反対する人がいると売却が進まないため、時間がかかる場合があります。


・代償分割

特定の相続人が遺産を取得し、その代わりにほかの相続人に金銭で補償する方法です。たとえば、実家を1人が相続し、その価値に応じた代償金をほかの相続人に支払う形です。


代償分割は、特定の相続人が遺産を単独で取得できる点がメリットです。ただし、代償金を支払うまとまった資金が必要なため、資金に余裕のある相続人がいる場合にしか使えません。


・共有分割

遺産を共有財産として相続人全員で所有する方法です。協議がまとまらない場合に使われますが、共有財産を売却する際、相続人間で意見が対立しやすいというデメリットがあります。そのため、将来的に実家の売却を考えている場合は適しません。



土地の境界を確認する


実家を売却する前に、土地の境界が特定されているか確認しましょう。土地の正確な面積や境界線を把握できなければ、隣地所有者と「どこまでが自分の土地か」を巡ってトラブルに発展する可能性があります。


土地の境界を確認する方法としては、以下の3種類があります。


・法務局で確認する

法務局で、登記記録や地図、地積測量図を取得して境界線を確認します。登記記録は「登記事項証明書」や

「登記簿謄本」のことを指します。地積測量図には、土地の面積や境界に関する情報が記載されています。


・境界標を探す

土地の境界を示すコンクリート杭や石杭などが現地に残っている場合、それを確認します。ただし、経年劣化や撤去によって境界標がなくなっている場合もあります。


・土地家屋調査士による測量

専門家である土地家屋調査士に依頼して境界を測量する方法です。プロの調査士による信頼性の高い測量が可能で、隣地所有者との協議もサポートしてくれます。



不動産会社は慎重に選ぶ


実家を売却する際は、不動産会社を慎重に選ぶことが大切です。不動産会社によって対応やサービスの内容が異なるため、自分に合った業者を見極めましょう。


たとえば、実家には大型ゴミや使わなくなった食器類、書籍などが多く残っているケースも少なくありません。こうした場合は、残置物の処分を手配してくれる業者であれば、売主の負担を軽減できます。


また、相続手続きに詳しい業者を選べば、売却時のトラブルを防げます。代償分割を含む相続手続きについて精通した業者であれば、難航していた実家の売却問題も解決できるでしょう。



不動産会社による買取も検討する


もし「早く売りたい」「なかなか売れない」という状況であれば、不動産会社による買取を利用するのもひとつの方法です。不動産会社に直接買い取ってもらうことで、迅速に現金化できます。


しかし、売却価格を重視している場合は注意が必要です。一般的に、不動産会社は買い取った物件に利益を上乗せして再販売するため、買取価格が市場価格より低く設定される傾向があります。


「とにかく早く売却したい」と考えている方は、買取を検討してみるのもよいでしょう。


日住サービスでは、無料査定を承っております。さまざまな物件に対応し、簡易査定と訪問査定をお選びいただけます。ぜひご利用ください。



まとめ


不動産を希望の価格で早く売却するためには、適切な売却計画を立てることが大切です。また、物件情報が見込み客に届かないと、売却に時間がかかる可能性があります。できるだけ多くの人に情報が行き渡るよう、効果的な宣伝活動を行いましょう。


また、実家の相続においては、相続人同士での意見の食い違いから、トラブルに発展するケースもあるでしょう。実家を売却する前に、相続に関する問題を解決しておくことが大切です。


株式会社日住サービスは、兵庫・大阪・京都圏の不動産会社です。地域密着型の強みと幅広いサポート体制を活かして、不動産の売却をお手伝いいたします。購入希望者への紹介、DMやポスティング広告、さらにはバーチャル内見ツアーなどにより、物件を効果的にアピールできます。


また、買取保証付き仲介や即金買取といった売却プランも提供しており、売却以外の不安や疑問についても親身に対応いたします。相続や税金についても、ぜひお気軽にご相談ください。








株式会社日住サービス

株式会社日住サービス

日住サービスは大阪・兵庫・京都の不動産探しのお手伝
いをしている総合不動産企業です。不動産に関するあら
ゆるご相談を承っております。