契約不適合責任とは?要件や瑕疵担保責任との違いをわかりやすく解説

不動産売買契約では、引渡し後に建物の不具合が見つかるケースも少なくありません。そうしたトラブルに対応するための制度が「契約不適合責任」です。民法の改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと名称と内容が変更され、買主の保護範囲や請求できる権利も大きく見直されました。

不動産の売買を検討しているなかで「どのような場合に責任が発生するのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、契約不適合責任の具体的な内容や範囲、瑕疵担保責任との違いについて解説しています。売主・買主が各々の視点で不利にならないような契約のポイントも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。


契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、売買契約や請負契約において引渡しされた物が、契約で定められた内容と一致しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。 具体的には「種類」「数量」「品質」の3つの観点で契約内容と異なる点があるかどうかが判断基準となります。

種類に関する契約不適合

「種類」とは、契約で定められた目的物と、買主に引渡しされた目的物の品目が違っていた場合を指します。不動産売買では、次のようなケースが該当します。

●シューズクロークを設置するとの契約だったのに、通常の靴箱が設置されていた
●ガレージ付き住宅として契約したのに、カーポートのみが設置されていた

数量に関する契約不適合

「数量」とは、契約で決めた目的物の数量に対して、買主に引渡しされた数量が不足しているか、もしくは過剰になっている場合です。不動産売買では、次のようなケースが該当します。

●「2台分の駐車スペース付き」とされていたが、実際には1台分しかなかった
●「収納棚を2つ設置」としていた場所に、ひとつしか設置されていなかった

品質に関する契約不適合

「品質」とは、引渡しされた目的物の品質が、契約上の品質基準に満たない状態を指します。不動産売買では、次のようなケースが該当します。

●引渡し後、建物に傾きや雨漏りなどの重大な欠陥が見つかった
●内装のフローリング材が、契約書に記載されていた素材とは異なっていた


契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任は、2020年4月に民法が改正されるまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。この2つがどのような点で異なるのか、詳しく解説します。

瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは、売買契約などにおける目的物の欠陥や不備といった瑕疵について、売主が買主に対して負う責任を指します。1898年に施行された旧民法以来、不動産取引に長く適用されてきた制度でした。

しかし、およそ120年もの間、民法全体の大幅な見直しが行われなかったため、制度の内容が現代の実務と合わなくなり、解釈や運用における曖昧さが課題となっていました。

改正により変わったこと

こうした背景を踏まえ、2020年4月に民法が大幅に改正されました。改正民法では、現代の社会状況や生活環境の変化に対応した内容が盛り込まれ、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」へと移行しました。

これにより、「契約内容に適合しているかどうか」を基準とした、より明確で実務的なルールが導入されています。ここでは、変更されたポイントについて、具体的に見ていきましょう。

契約責任説が採用:契約内容が重視されるようになった

旧民法にもとづいた瑕疵担保責任には「法定責任説」と「契約責任説」という2つの考え方があり、実際には「法定責任説」が通説として採用されていました。

●法定責任説:売主は契約で定められた目的物を引き渡せば、義務を果たしたとする
●契約責任説:契約内容と目的物の種類、数量、品質が合致しない場合に、不完全履行として売主が責任を追うとする

法定責任説に従うと、たとえ目的物に欠陥があったとしても、売主は引渡しさえ済ませれば責任を負わないことになります。こうした買主に不利な状況を補うために、特別に売主の責任を認める「瑕疵担保責任」が適用されていました。

一方、契約不適合責任では「契約責任説」が採用されています。つまり引渡しされた物件に欠陥がある場合「不完全履行」となるため、売主は損害賠償責任を負ったり契約を解除されたりする可能性があります。

この変更により、契約内容の適合性がより重視され、買主保護の観点が強化されました。

隠れた瑕疵の要件が廃止:売主の責任の範囲が広がった

契約不適合責任への改正により、大きく変わった点のひとつが「責任の範囲」です。従来の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」があることが前提であり、買主が通常の注意を払っても気づけなかった欠陥でなければ、売主は原則として責任を負いませんでした。

しかし、契約不適合責任では、欠陥が隠れていたかどうかは問題ではありません。契約で取り決めた内容と異なる点(種類・品質・数量など)があれば、それだけで売主の責任が発生するのが特徴です。契約全体の内容に照らして、目的物が適合していない場合には、売主は契約不適合責任を問われる可能性があります。

この新制度では「契約内容に適合しているかどうか」が判断の基準となるため、客観的な合意内容を正確に把握しておくことがより重要となりました。責任の有無を判断する際には「契約時の取り決め」が基準とされるため、後々のトラブルを防ぐには契約書に内容を明記し、当事者間で把握しておくことが欠かせません。

買主の追求手段が増加:多様な方法で権利を主張できるようになった

瑕疵担保責任において、買主が売主に求められる内容は「損害賠償請求」か「契約の解除」のいずれかでした。しかし、民法改正により契約不適合責任へ切り替わったことで、買主は上記に加えて「追完請求」「代金減額請求」という追求手段を取れるようになりました。


契約不適合責任で買主が請求できる4つの権利

契約不適合責任で買主が請求できる権利は以下の4つです。

●追完請求
●損害賠償請求
●代金減額請求
●契約解除

ここでは、それぞれの権利についてくわしく解説します。

追完請求

追完請求は、引渡しされたものが契約不適合だった場合に、買主が売主に対して、契約どおりの状態に「履行を完了」させるよう請求する権利です。請求の方法には、以下の3つがあります。

●目的物の修補
●代替物の引渡し
●不足分の引渡し

どの方法を取るかは、買主が優先的に選択できるものとされています。

ただし、買主に不相当な負担を課するものでなければ、売主は買主が指定する方法以外のやり方で追完してもよいことになっています。

たとえば、「雨漏りがない」という条件で引渡した中古物件に雨漏りが見つかり、買主が雨漏りのない別の物件の引渡しを請求したとします。これに対して、売主には買主に不相当な負担を課するものでないことを理由に、修補での対応が認められます。

損害賠償請求

買主は、契約不適合によって生じた損害について、売主に損害賠償を請求することができます。この請求は、追完請求や契約解除といったほかの手段と併用することも可能です。ただし、すでにほかの手段によって損害の一部が回復されている場合には、同じ損害について重ねて賠償を求めることはできません。
 
たとえば、天井から雨漏りが発生し、その影響で購入したばかりの家具が腐食・損傷した場合、売主に対して「雨漏り部分の補修」とあわせて「損傷した家具の修理費用」についても損害賠償を請求することができます。

損害の範囲が契約不適合によって拡大した場合には、その実害に見合った補償を求めることが可能です。

代金減額請求

代金減額請求とは、契約内容に適合しない目的物が引渡しされたにもかかわらず、交換や修理などの追完が行われない場合に、買主が売主に対して代金の減額を求める権利です。

通常は、まず追完請求を行い、売主がそれに応じなかった場合に代金の減額を請求する流れになりますが、売主が明らかに追完に応じる意思がないと判断される場合には、最初から代金減額を請求することも可能です。

契約どおりの履行が見込めない場合でも、買主が一方的に損を被ることがないようにするための救済手段として位置づけられています。

契約解除

契約解除は、売主に対して追完の催告を行ったにもかかわらず、期日までに履行されなかった場合に買主が行使できる権利です。そもそも追完が不可能なケースなどは、事前の催告が不要とされています。

ただし、不適合の程度が契約内容や取引上の社会通念に照らして軽微でなく、かつ売主が履行の追完を拒否した場合や、履行の追完が不能である場合などに限られます。

契約不適合責任に関する知識は、不動産取引のリスクを減らすうえで非常に大切です。とくに売却を検討している場合は、信頼できる不動産会社と契約することが、安心して取引を進めるための重要なポイントとなります。



契約不適合責任を追及できる期間と時効

売買契約・請負契約で契約不適合責任を追及できる期間は、不適合の内容によって異なります。また、これから解説する期限は買主が個人の場合に適用されるもので、買主が企業の場合は別のルールが設けられています。その点についても、あわせて確認していきましょう。

目的物や成果物の「種類・品質」が契約内容に適合しない場合

「種類」「品質」については、買主はそのことを知った日から1年以内に売主へその旨を通知する必要があります。期限内に通知しなければ、買主は追完請求などの権利行使ができません。

なお、追完請求などの請求権には時効があり、権利行使ができることを知ったときから5年、目的物の引渡し時から10年経つと時効消滅します。買主は、通知を行ったあと消滅時効を迎える前に請求を行う必要があります。


目的物や成果物の「数量」が契約内容に適合しない場合

「数量」について、買主は通知を行わずに追完請求などの権利を行使できます。ただし、消滅時効は適用されるため、権利行使ができることを知ったときから5年、目的物の引渡し時から10年経つと、請求できなくなります。

新築住宅の場合は住宅品質確保法の特例が適用

新築住宅については、住宅品質確保法という法律の特例が適用され、住宅の不具合に対する売主の責任期間が「引渡しから10年」と定められています。この期間内に新築物件に不具合が見つかった場合、買主は追完請求などの権利行使ができます。

(//laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000081/)

買主が企業の場合は例外

買主が企業の場合は、業者間の売買にあたるため、商法上のルールに従う必要があります。このようなケースにおいて、買主は目的物を受け取ったら、ただちに検査を行わなければなりません。

そこで契約不適合が見つかった場合、すぐに売主へ通知する必要があります。通知を怠った場合は、追完請求などの権利を行使できません。


契約不適合責任の免責

契約不適合責任は任意規定であるため、該当の項目について契約書に記載がなければ法律の規定が適用されます。
ただし、契約書に免責事項を記載している場合は、契約書の規定を優先して適用することとなっています。

そのことから、契約書には契約不適合責任の免責事項を記載できるケースもあると覚えておきましょう。

ただし、契約書の免責事項はあくまで任意であり、売主と買主の同意がなければ成立しません。また、免責が有効になるかどうかは、売主の属性によって変わってきます。

売主が個人:原則有効

売主が個人の場合、適用される法律が民法のみのため、契約書に任意で免責事項を記載できます。免責が無効になる一部のケースを除き、原則として契約書に記載した免責事項は有効です。

売主が宅建業者以外の事業者:原則無効

売主が宅建業者以外の事業者の場合は、民法に加えて消費者契約法が適用されます。消費者契約法には、引渡し直後からの免責を無効とする規定があり、以下のケースに該当すると、契約書に免責事項を記載しても無効となる可能性があります。

●契約不適合責任を完全に免責する特約をつけた場合
●通知期間を短期間にした場合

出典:e-GOV法令検索「消費者契約法」(//laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061)

売主が宅建業者:引渡し後2年まで無効

売主が宅建業者で、なおかつ買主が個人のケースでは、宅地建物取引業法の規定が適用されます。それによると、個人が宅建業者から購入した物件は、引渡しから2年まで免責が無効です。

出典:e-GOV法令検索「宅地建物取引業法」(//laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176)


売主も買主も契約書のチェックが大事

売主と買主は、それぞれの立場で契約書の内容が不利になっていないか、十分にチェックする必要があります。売主と買主それぞれの観点から、契約書の作成時に押さえておきたいポイントについて解説します。

売主の立場

売主の立場を有利にするには「売主側が一切の担保責任を負わない」という条件をつけるのが理想的です。ただし、双方の合意がなければ免責は有効にならないため、買主が圧倒的に不利となる条件は承諾されない可能性が高いでしょう。

そこで、少しでも売主に有利な条件を加えるとすれば、以下のようなルールを契約書に記載する方法があります。

●売主が追完の方法を選択できる
●売主が追完や代金の減額に応じた場合、買主は契約解除や損害賠償の請求ができない
●買主の検査を経て検収された目的物について、売主は責任を負わない
●発見された契約不適合について、買主の悪意がある場合、売主は契約不適合責任を負わない

買主の立場

買主の立場からは、次のような内容が契約書に記載されていれば、有利といえるでしょう。

●追完の方法は買主が決定し、売主に選択の余地はない
●追完の催告なしで、即座に代金の減額を請求できる
●発見時期にかかわらず、買主は責任を追及できる

また、買主が権利行使できる期間が、民法の規定よりも短く定められていないかどうかもチェックしておくとよいでしょう。


まとめ

契約不適合責任は、売買契約や請負契約において、引渡しされた目的物が契約内容と異なった場合に、売主が買主に対して負う責任を指します。民法改正以前まで適用されていた瑕疵担保責任に比べて、売主の責任が重くなり、買主が行使できる権利の範囲が広がりました。

これは任意規定であり、条件によっては民法よりも契約書に記載された規定が優先される場合があります。売主と買主は、それぞれの立場で不利にならないかどうか契約書の内容を慎重に確認してから同意することが重要です。

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