抵当権とは?根抵当権との違いや抹消手続きをわかりやすく解説


抵当権の付いている不動産は売却できるかご存じですか。環境の変化などから、住宅ローン返済中に売却したいと考えるケースは多くあります。しかし、抵当権が付いていれば不利になるのではと心配な方もいるでしょう。


本記事では抵当権の基本的なところや、住宅売却時の注意点について解説します。



抵当権とは



抵当権とは、住宅ローンなどを組むときに、金融機関などが債務者に対して担保をつける権利のことです。担保になるものは建物や土地などの不動産です。


万が一債務者がローンを返済できなくなったときに、債権者は担保とした不動産を競売にかけ、この売却額を返済金に充てる仕組みです。


設定された抵当権は、登記簿謄本で確認可能です。不動産登記簿謄本の権利部(乙区)に抵当権の内容が記載されています。不動産登記簿謄本とは、不動産登記の情報が記載されている書類です。


設定されるタイミングは?


抵当権は、住宅ローンの融資が実行されるタイミングで金融機関が設定しますが、通常は司法書士が代行するケースが大半です。抵当権を設定するには専門知識が必要なため、金融機関が直接設定することはほとんどありません。


ただし、司法書士は金融機関や不動産会社から紹介される場合が多く、借主が自ら探す必要はありません。


抵当権の設定を司法書士に代行してもらう場合は、報酬を支払う必要があります。報酬額は、設定登記や所有権移転の数によって異なるものです。たとえば、ペアローンを組む場合は件数が増えるため、報酬額が増えます。一般的なケースであれば、報酬額は10~12万円程度です。


司法書士への報酬以外にも、抵当権を登記する際は、登録免許税がかかります。税額は、住宅ローン融資額に0.4%の税率を掛けた額です。例外として、一定要件を満たせば0.1%に軽減されることもあります。


抵当権の設定での注意点は、抹消するには手続きが必要なことです。住宅ローンを完済すれば自動的になくなるのではと考えがちですが、完済後は抹消の手続きを忘れないようにしましょう。


実行されるとどうなる?


抵当権が実行されるのは、住宅ローンの返済が滞ったときです。返済の義務を怠る債務不履行の状態になっていることが要件となります。ただし、数日遅れで返済するなど、次の返済約定日までに返済できていれば、債務不履行とはなりません。


滞納が続くと、金融機関が債権回収の動きをします。もし、保証会社の保証がついている融資であれば「代理弁済」を保証会社に請求するため、すぐには実行されません。


しかし、保証がついていない融資であれば、債権回収会社に委託して実行されます。これが抵当権の実行です。抵当権が実行されると、担保としていた建物や土地が強制的に競売にかけられます。売却できれば、その金額が返済に充てられます。


しかし、市場価格よりも低い価格で落札されることもあるため、返済できないケースもあるでしょう。このような場合には、給与の差し押さえなどに発展します。


根抵当権との違いは?


根抵当権とは抵当権の一種で、決めた借入限度額(極度額)の範囲内であれば、何度でも借り入れと返済を繰り返せる権利のことです。一般的な住宅ローンで設定されることはほとんどありません。


根抵当権は、リバースモーゲージで契約した際に設定されることがあります。リバースモーゲージとは、持ち家に住みながらその家を担保に融資を受ける資金調達方法です。通常の住宅ローンを契約するのが難しくなる、シニア世代が利用しています。


ほかにも、法人や個人事業主が事業資金を借りる場合や、不動産担保型のカードローンを組む場合に、根抵当権が設定されることがあるでしょう。


抵当権と根抵当権の違いは、主に以下のとおりです。


  • 債権の種類(範囲)の設定の有無
     抵当権は1つの債権に対して1つの抵当権を設定する一方、根抵当権は債務者と債権者との間で種類を設定します。そして、担保となるものの評価額から上限額を設定し、その範囲で借り入れと返済を繰り返せるということです。


  • 一度の設定で借り入れできる回数
     抵当権は一度の設定で借り入れできるのは1度だけです。追加で融資を受けたい場合は、再度手続きが必要になります。一方の根抵当権は、設定した範囲内であれば何度でも借り入れできるのが特徴です。


  • 連帯債務者の有無
     抵当権では連帯債務者が認められます。連帯債務者とは債務者と連名で契約し、債務者と同じく返済の義務を負うものです。一方の根抵当権は、自由に借り入れと返済を繰り返せるため、連帯債務者が付けられません。


  • 抹消手続き時の合意の有無

 抵当権の完済後は、抹消の手続きさえすれば設定を解除できます。一方の根抵当権を抹消する場合は、債権者との合意の上での抹消手続きが必要です。


抵当権と根抵当権では、債権の種類や範囲、借り入れと返済の自由さの違いが、大きく異なります。


融資を受ける場合、返済途中で融資先を変更することもあるでしょう。しかし、根抵当権を設定している場合は融資元を変更しづらいと言われてます。これは、融資元の金融機関が金利の高い根抵当権の解約を、なかなか了承しない場合があるからです。


ただし、債務を完済していれば基本的には解除に同意するため、実際には解除しにくいケースは少ないでしょう。



抵当権のメリット・デメリット




抵当権には、債務者と金融機関の双方にメリットとデメリットがあります。それぞれを詳しくみてみましょう。


メリット


抵当権の大きなメリットは、住宅ローンを利用できるところです。住宅ローンは抵当権を設定する有担保ローンが一般的なため、抵当権を設定しなければ住宅ローンは組めません。


これは金融機関にとってもメリットです。担保を確保して融資できるため、万が一返済が滞っても貸し倒れるリスクを減らせます。


債務者にとっては、金利を低くできるところもメリットです。金融機関によっては抵当権を設定しない無担保ローンを利用できますが、有担保ローンよりも金利が高く設定されます。抵当権を設定することで、返済額を抑えられるメリットがあります。


また、無担保ローンよりも有担保ローンの方が多い金額を借りられるところもメリットです。


デメリット


抵当権を設定することで返済額を抑えられますが、万が一返済が滞ると、所有権を失う可能性があります。最悪の場合、家を手放すことにもなるため注意が必要です。


一方、抵当権の設定によって支払いが滞った場合、金融機関は担保にしている物件を競売にかけられるのですが、必ず返済額を賄えるわけではありません。また、抵当権の順位によっては弁済が十分に受けられない可能性がある点が、金融機関にとってはデメリットです。


また、債務者にとっては、抵当権を設定する際と全額返済が完了して抹消する際に手間とコストがかかります。



抵当権付きの不動産は売却できる?


抵当権付きの不動産を売却することは可能です。しかし、実際には抵当権が付いていると買い手が見つかりにくいため、抵当権を抹消して売却するのが一般的です。抵当権を抹消する場合は、住宅ローンを完済する必要があります。


不動産の売却を考えているなら、住宅ローンを完済しておくとスムーズに進むでしょう。


また、抵当権付きの不動産を相続する場合は注意が必要です。相続は可能ですが、返済義務も含めて相続することになります。返済義務まで相続したくないのであれば、売却と同じく先に住宅ローンを完済しておかなければいけません。


ただし、債務者の死亡により相続が必要な場合は、団体信用生命保険に加入していれば、住宅ローンの残高が残っていても相続される側に返済義務は発生しません。


団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が返済中に死亡するなど万が一の場合に、住宅ローンの残高がゼロになる保険のことです。よって、住宅ローンの完済と同様になるため、抹消手続き後の相続が可能になります。



抵当権の抹消に関する知識




抵当権を抹消するには、住宅ローンの完済が前提となります。


返済期間中に不動産を売却するために抵当権を抹消したい場合は、不動産の売却価格を住宅ローンの返済に充てることが可能です。しかし、ローン残高が発生する場合は、自己資金で補填してから抹消手続きを進めることになります。


抵当権を抹消する流れから必要な書類、かかる費用などを確認します。


抹消手続きの流れ


以下の手順で抹消手続きを行います。


  1. 法務局で登記事項証明書を発行してもらう
     発行から3か月以内でないと無効になるため気をつけましょう。

  2. 戸籍謄本もしくは住民票を取得する
     戸籍謄本は指名が変更されている場合、住民票は住所が変更されている場合です。

  3. 登記申請書を作成して法務局へ申請する
     登記申請書の作成は複雑なため、司法書士に相談できます。

  4. 法務局で完了書類を受け取る
     印鑑と本人確認書類が必要です。


司法書士に相談せず自分で行う場合に、わからないことがあれば、法務局でアドバイスをもらいましょう。


出典:法務局「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」(//houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/info-net_00001.html)


抹消に必要な書類


抹消手続きでは、以下の書類が必要です。


  • 抵当権解除証書または抵当権放棄証書
     借入金が完済されたことを証明する書類です。弁済証書とも呼ばれており、抵当権者である金融機関から送付されます。

  • 委任状
     金融機関のものを使用します。金融機関が抹消手続きを委任するために必要です。

  • 登記済権利証または登記識別情報通知
     通称「権利証」と言われているものです。抵当権を設定した時に金融機関に交付されています。


出典:法務局「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」(//houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/info-net_00001.html)


抹消にかかる費用


抹消手続きにかかる費用は以下のとおりです。


  • 登録免許税発行手数料
     不動産1件につき1,000円

  • 登記事項証明書発行手数料
     500〜600円程度

  • 司法書士への報酬
     依頼先によって異なります。


登記申請書の作成など、抹消登記の手続きも司法書士に依頼する場合は、別途1〜2万円程度の報酬が必要です。


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まとめ


抵当権とは、金融機関が債務者に対して担保をつける権利のことです。一般的に、住宅ローンは有担保ローンとなっています。抵当権は融資が実行されるタイミングで設定されますが、司法書士に依頼するため、報酬額が発生する点に注意が必要です。


問題なく返済できるなら、抵当権は債務者にとってはメリットとなります。無担保ローンよりも低金利なため、返済額を抑えるのが可能です。しかし、返済が滞った場合は、家を手放さなくてはいけません。


住宅を売却する場合は、完済して抹消手続きをしてから行います。売却金額を返済に充てることもできますが、債務が残ることがあります。債務超過の場合は、任意売却という方法もあるため、早めに不動産会社へ相談するのがおすすめです。


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