親の家を相続する場合の選択肢は?相続の流れや注意点を解説

親の家を相続するとなったとき「何をすればいいのか?」「必要な手続きは?」と悩む方も多いのではないでしょうか。親から受け継ぐ実家の相続は、多くの手続きや判断が必要です。選択肢の検討はもちろん、期限のある手続きや税金、トラブルへの備えも検討しなければいけません。


本記事では、実家相続の選択肢や手続きの流れ、税金と場合によって利用できる特例や注意点について網羅的に解説します。相続を控えている方、相続が発生した方は、スムーズに手続きを進めるための参考にしてください。

親の家を相続する際の選択肢

  


親の家を相続することになった際、まず考えるべきは「その家をどうするか」という点です。本項目では相続時に利用される4つの選択肢を解説していきます。

1.自分・親族が住む
2.売却・貸し出す
3.更地にして活用する
4.相続放棄・限定承認

ご自身の状況に適した選択肢を見つけるための参考にしてください。

1.自分・親族が住む

親の家を相続し、ご自身やほかの親族が住むという選択肢は、慣れ親しんだ家での生活を継続できるメリットがあります。実家に思い入れがあったり、立地がよかったりする場合に魅力的な選択となるでしょう。
しかし、デメリットも存在します。

●固定資産税や都市計画税が毎年発生する
●建物の状態によっては修繕やリフォームが必要な場合がある
●複数の相続人がいる場合、遺産の公平性が問題になるおそれがある

感情的な側面だけでなく、具体的な費用負担やほかの相続人との公平性も踏まえた、長期的な目線での判断が重要です。

2.売却・貸し出す
相続した家に誰も住む予定がない場合、売却して現金化するか、賃貸に出して収益化を図る方法が考えられます。
売却のメリットは主に3つです。

●不動産を現金化できる
●売却の利益から最高3,000万円を差し引く特例が受けられる
●固定資産税や修繕費といった維持管理の負担がなくなる

売却を検討する際は、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。ただし、希望の価格やタイミングで売れなかったり、時間がかかったりする可能性もあるため、注意しましょう。

賃貸に出す場合は、継続的な家賃収入を得られる可能性がありますが、空室リスクや入居者とのトラブルが発生するリスクがともないます。リフォームが必要な場合もあるため、許容できる限度額の設定が必要です。

売却・賃貸のいずれを選ぶにしても、不動産取引や税金の知識が必要です。不動産会社や税理士といった専門家へ相談しましょう。

3.更地にして活用する
実家が老朽化していたり居住や賃貸が難しかったりする場合は、更地にして再活用するのもひとつの方法です。土地の広さや形状、地域のニーズに応じて活用方法を選びましょう。

●月極駐車場やコインパーキング
●賃貸アパートやマンションの建設
●トランクルームの設置

再活用することで建物の維持管理や将来的な手続き負担を減らせますが、注意すべき点が2つあります。

●解体費用が発生する:一般的な木造住宅でも100万円前後必要
●固定資産税の増加:住宅特例がなくなるため最大6倍になるおそれがある

実家を更地にして再活用を検討する場合は、土地活用の専門家などに相談し、採算が取れるかどうかを慎重に見極めたうえで判断しましょう。

4.相続放棄・限定承認
相続による財産で親の借金を完済できなかったり、財産相続を拒否したい場合は「相続放棄」や「限定承認」を検討します。

「相続放棄」は、財産の種別を問わず、一切の相続権を放棄する方法です。特定の財産だけを選んでの放棄はできず、すべての相続権を失いますが、借金などのマイナス財産の引き継ぎ義務もなくなります。

「限定承認」は、相続で得たプラスの財産の範囲内でのみ、マイナス財産を引き継ぐ方法です。負債額が不明確な場合に有効ですが、手続きが非常に複雑かつ、相続人全員で行う必要があるため、実際に利用されるケースは稀です。

どちらの手続きを選択するにしても、自身が相続人と知ったときから3か月以内に家庭裁判所への申述が必要です。期間を過ぎると、すべての財産と負債を相続する「単純承認」とみなされるため注意してください。

親の家を相続する際にかかる税金

親の家を相続する際には、いくつかの税金がかかる可能性があります。本項目では相続に関わる税金について紹介します。

●相続税
●登録免許税

それぞれの税金がどのような場合に、どの程度かかるのかを把握しましょう。

相続税
相続税は、受け継いだ遺産総額のうち「基礎控除額」を超えた部分に課税される税金です。遺産総額が基礎控除額の範囲内であれば、原則として相続税の申告・納税は不要となります。

相続税額は、親の家などの不動産における「土地」と「建物」の評価額に左右されます。


評価対象

算出方法

土地

路線価方式:道路ごとに定められた土地価格をもとに評価

倍率方式:固定資産税に地域ごとの一定倍率を掛けて評価

建物

固定資産税評価額:市区町村が決定する固定資産税の基準額で評価

基礎控除額を超えて相続税が発生する場合、税率は遺産の額に応じて10〜最大55%の累進課税が適用されます。

財産評価や税額計算には専門知識が必要であるため、相続税に詳しい税理士に相談しながら手続きを進めましょう。

登録免許税
登録免許税は、相続登記を法務局に申請する際に、国へ納める税金です。

税額の計算方法は、相続する家の「固定資産税評価額」に税率0.4%を掛けて算出します。固定資産税評価額が2,000万円であれば、登録免許税は8万円になる計算です。

売買による名義変更の税率である2%よりも低いため、名義変更にかかる初期費用を抑えられるメリットがあります。

納付は、登記申請時に収入印紙を購入して法務局に提出するのが一般的です。司法書士への依頼も可能ですが、手続きにかかる実費に加えて報酬が必要となるため、費用を抑えたい場合は自身での手続きも検討しましょう。


相続の流れ

本項目では親の家の相続が発生した場合や発生しそうな場合、どのような流れで手続きを進めればよいかを、6つのステップで解説します。


1.遺言書の有無の確認
2.相続人の確定・相続財産調査
3.相続放棄・承認
4.遺産分割協議
5.相続登記
6.相続税申告

各手続きで行うべき内容を理解し、ひとつずつ進めていきましょう。

1.遺言書の有無の確認
最初に「遺言書」の有無を確認しましょう。法的に有効な遺言書が存在する場合、原則としてその内容にしたがって遺産分割が進められるためです。

遺言書を探す場合、一般的には下記の候補があります。

●故人の自宅
●公証役場
●法務局の遺言書保管所

もし遺言書が見つかった場合は、勝手に開封してはいけません。正式な遺言書かを確認する「検認」という手続きを、家庭裁判所に依頼する必要があるためです。

遺言書の有無は以後の手続きに大きく影響するため、必ず実施してください。

2.相続人の確定・相続財産調査
遺言書がなかったり、遺言書に指定されていない財産があったりする場合は、3つの項目について調査が必要です。

●相続人となる人物
●財産の種類
●財産の量や規模

相続人の確定漏れや財産の見落としがあると、のちに行う遺産分割協議が無効になったり、相続税の申告をやり直したりする可能性があります。

相続人の確定には亡くなった方の「戸籍謄本」が、財産の確定には預貯金通帳や借用書など、プラス・マイナスを問わず、すべての財産調査が必要です。

調査は時間と手間がかかるため、司法書士や弁護士、税理士などの専門家への依頼も有効な手段です。

3.相続放棄・承認
相続財産が確定したら、相続するか否かを3か月以内に判断します。しかし、借金が多いなどの理由で相続を望まない場合「相続放棄」か「限定承認」のどちらかを選択しなければいけません。

 

方法

メリット

デメリット

相続放棄

マイナス財産の対応義務がなくなる

プラスの財産も一切相続できない

限定承認

プラス財産の範囲内で借金返済などが可能

手続きが複雑

相続人全員で行う必要がある


それぞれの手続きは家庭裁判所で行うため、判断に迷う場合や手続きに不安がある場合は、早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。

4.遺産分割協議
相続対象の財産は相続人全員で「誰が」「どの財産を」「どれだけ相続するか」を決める「遺産分割協議」が必要です。

相続人全員が一堂に会して行う必要はありませんが、2点確認が必要です。

●相続人全員が内容に合意しているか
●合意内容を証明する「遺産分割協議書」が作成されているか

相続人間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停や審判を申し立てて財産の分割方法を決定します。

5.相続登記
家の相続が決まったら、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」の手続きを実施します。相続登記の申請には複数の書類が必要です。

●登記申請書
●被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
●被相続人の住民票の除票
●相続人全員の戸籍謄本
●遺産分割協議書(または遺言書)
●相続人の住民票と印鑑証明書
●固定資産評価証明書

相続によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の手続きを申請しなければいけません。申請を怠った場合には、10万円以下の罰金が科される可能性があるため注意してください。

6.相続税申告
相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)で算出)を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。

原則的に「被相続人が亡くなった事実を知った日の翌日から10か月以内」に所定の税務署へ申告と納付をしなければいけません。期限内に実施されない場合は、延滞税や無申告加算税などが課される可能性があります。

申告書の作成や計算に誤りがあると、必要以上の税金を納めてしまったり、追徴課税されたりするリスクがあるため、相続に詳しい税理士に相談しながら手続きを進めましょう。


親の家を相続する際の注意点

親の家を相続するには、財産を引き継ぐだけでなく、責任や負担も引き継ぐ形になります。本項目では、親の家を相続する際に注意すべき点を解説します。


●継続的な管理が必要
●維持には多額の費用がかかる
●ほかの相続人に代償金を支払う可能性がある
●売却したくても買い手がつかない場合がある

紹介する注意点を踏まえ、ご自身やご家族にとって最善の選択をしていきましょう。

継続的な管理が必要
相続した家にご自身が住まない場合は「空き家」となりますが、管理責任は所有者(相続した本人)が負います。

空き家はあっという間に劣化します。定期的な換気や清掃・草むしりといった管理が不可欠であり、管理を怠ってしまうと、建物の劣化や景観の悪化だけでなく、不法投棄や放火といった防犯上のリスクも高まるでしょう。

もし管理ができていない場合、注意すべきは「空き家対策特別措置法」です。管理不全な空き家は、行政から指導や勧告を受けたのち、最終的には強制的に解体される可能性があります。

相続前に、管理上の負担とコストを誰がどう担うかも必ず検討しておきましょう。

維持には多額の費用がかかる
親の家を相続すると、維持費用も発生し続けます。代表的な費用は「固定資産税」と「都市計画税」の2種類です。

家の評価額や自治体によって異なりますが、一般的な戸建ての場合、年間10万円から15万円程度の負担になる場合が多いでしょう。さらに、建物は経年劣化するため、定期的な修繕やメンテナンスが不可欠です。

管理に必要なコストを長期的に負担できるかどうかも、必ず確認しておきましょう。

ほかの相続人に代償金を支払う可能性がある
相続人が複数いる場合、遺産分割において親の家を不動産としてどのように扱うかには注意が必要です。

遺産の大部分が実家であり、ほかの相続財産が少ない場合、実家を相続した人とそうでない人の間で、受け取る遺産に差が生じてしまいます。そのため、実家の相続人は、ほかの相続人に対して差額を埋める現金(代償金)を支払う義務が生じる可能性があります。

遺産分割協議の際は、代償金の必要性と支払い方法についても、事前に話し合っておく必要があると覚えておきましょう。

売却したくても買い手がつかない場合がある
相続した親の家が不要な場合、売却して現金化するのも解決策のひとつです。しかし、建物の老朽化が激しい場合などは買い手を見つけるのが困難な場合もあります。

買い手がつかない場合でも、広告費用や不動産会社への仲介手数料のほか、固定資産税や管理費といった費用は発生します。売却が困難な場合は費用負担が増す前に、不動産会社への買取依頼もおすすめです。

売却を検討する際には地元の不動産会社に相談し、需要の有無や売却の可能性をあらかじめ確認しておきましょう。


親の家を相続する際に活用できる税金対策

親の家を相続する際に発生する相続税には、利用可能な税金対策があります。本項目では、家の相続に活用される特例について解説します。


●小規模宅地等の特例
●相続空き家の3,000万円特別控除
●相続財産譲渡時の取得費の特例

どの特例が利用できるか、専門家である税理士に相談しながら確認しましょう。

小規模宅地等の特例
「小規模宅地等の特例」は、亡くなった方や生計をともにしていた親族が住んでいた土地や事業に使っていた土地を相続した場合に、土地の評価額を最大で80%減額できる特例です。

たとえば、評価額が5,000万円の居住用宅地に適用できれば、80%減額の1,000万円で計算できるため、相続税額を大幅に減らせます。

ただし、特例を適用できる相続人は「被相続人の配偶者」や「被相続人と同居していた親族」に限られます。同居していなかった親族が相続する場合は、持ち家がないといった要件を満たさなければならないため、注意しましょう。

出典:国税庁ウェブサイト

相続空き家の3000万円特別控除
相続した親の家を、空き家として売却した場合に利用できる特例が「相続空き家の3,000万円特別控除」です。

相続または遺贈によって取得した空き家を売却した際に得た利益から、最大3,000万円まで控除できます。たとえば売却益が3,000万円以下であれば、譲渡所得税がかからなくなる可能性があるということです。

特例適用のためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

●相続開始直前に被相続人がひとりで住んでいた家である
●昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
●相続開始日から3年を経過する年の年末までに売却すること
●売却代金が1億円以下であること

相続した家が特例適用が可能かどうかは、税理士に確認するのがおすすめです。

出典:国税庁ウェブサイト

相続財産譲渡時の取得費の特例
相続または遺贈によって取得した親の家などの財産を、相続開始から一定期間内に売却した場合は「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用できる可能性があります。

特例を適用するためには「相続によって財産を取得したこと」「財産取得者に相続税が課税されたこと」「相続開始日の翌日から3年10か月以内に売却していること」といった要件を満たさなければいけません。

注意点は「相続空き家の3,000万円特別控除」との併用はできない点です。どちらの特例を利用する方が有効なのかは、状況によって異なるため、税理士に相談しながら検討してください。

出典:国税庁ウェブサイト

まとめ

実家の相続は、多くの人が関わる大きなライフイベントであり、さまざまな手続きや判断が必要です。何度も経験するものではなく、人によって状況が違うため、何を参考にすればよいか迷う方も多いでしょう。

まずは、自身の状況や家族の意向を踏まえて、実家の活用法を決めるところから始めましょう。再活用や売却、相続放棄など選択肢によって必要な手続きが異なります。最初に、おおまかな方向性を定めてから、相続手続きを進めていくのがおすすめです。

ただし、相続手続きには期限や注意点が多々あります。複雑な要素や専門知識が絡むため、ひとりで悩まず、弁護士や司法書士といった専門家に相談しながら、ひとつずつ進めていきましょう。

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