入居率とは?不動産投資における目安や計算方法・改善方法を解説


不動産投資を検討しているけれど、管理会社から提示される「入居率98%」という数字をどう判断すべきか迷っていませんか?表面利回りが高い物件でも、実際の入居率が低ければ期待する収益は得られません。

本記事では、入居率の正しい理解から具体的な改善方法まで、長期的に安定した不動産経営を実現するために必要な知識を紹介します。


そもそも入居率とは?

不動産投資の成否を左右する重要な指標のひとつが「入居率」です。入居率とは、アパートやマンションの総戸数に対する入居者の割合を示す指標です。たとえば、総戸数10戸の物件のうち8戸に入居している場合、入居率は80%となります。

基本的な計算式は次のとおりです。

入居率=(入居している部屋数÷総戸数)×100

また、賃貸可能な戸数から空室を差し引く方法でも算出できます。

入居率={(賃貸可能な戸数−空室の戸数)÷賃貸できる戸数}×100

入居率と表裏一体の関係にあるのが空室率です。入居率80%の物件であれば、空室率は20%となり、合計すると必ず100%になります。

入居率が重要な理由

入居率は、不動産投資の収益性に直結するもっとも重要な指標のひとつです。

キャッシュフローへの直接的な影響があります。入居率が10%下がれば、家賃収入も10%減少し、ローン返済や管理費の負担が相対的に重くなります。

たとえば、月額家賃10万円の10戸物件で入居率が90%から80%に下がると、月収入は90万円から80万円へと10万円も減少してしまいます。

また、空室期間の長期化による機会損失も深刻な問題です。空室期間中も管理費や修繕積立金、固定資産税などの維持管理費は発生し続けるため、入居率の低下は利益率を大幅に悪化させる要因となります。


入居率には3種類ある

実は入居率の計算方法には3つの異なるアプローチがあり、同じ物件でも計算方法によって結果が大きく変わります。不動産会社が公表する入居率を正しく理解するために、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

時点入居率

時点入居率は、特定の時点での入居状況を示すもっともシンプルな指標です。

時点入居率=(入居部屋数÷総戸数)×100

たとえば、12月末時点で総戸数20戸のうち18戸に入居している場合、時点入居率は90%となります。

この方法は計算が容易で理解しやすい反面、管理会社にとって都合のよい時期(繁忙期など)の数値を使って入居率を高く見せることが可能です。「年間最高時の入居率98%」のような表示がされることもあるため、注意が必要です。

稼働入居率

稼働入居率は、年間を通じた稼働日数に対する入居日数の割合を示す指標で、より実態を反映した数値といえます。

稼働入居率={(総戸数×365日)−(空室数×空室日数)}÷(総戸数×365日)×100

総戸数10戸の物件で、1年間のうち2戸が60日間空室だった場合

●総稼働可能日数:10戸×365日=3,650日
●実際の空室日数:2戸×60日=120日
●稼働入居率:(3,650日−120日)÷3,650日×100=96.7%

この計算方法は長期的な運用実績をより正確に反映するため、収支計画の信頼性が高まります。

賃料入居率

賃料入居率は、満室時の想定年間賃料に対する実際の年間賃料収入の割合を表す指標です。

賃料入居率=(満室時想定年間賃料-空室による未収賃料)÷満室時想定年間賃料×100

満室時の年間賃料が1,200万円の物件で、空室により120万円の未収が発生した場合、賃料入居率は(1,200万円−120万円)÷1,200万円×100=90%となります。

この指標は実際のキャッシュフローに直結するため、収益性を判断する上でもっとも現実的な数値といえるでしょう。


「賃貸可能な部屋」「空室」の定義は管理会社によって異なる

入居率の計算において「賃貸可能な部屋」や「空室」の定義が管理会社によって微妙に異なることも、数値の差が生まれる重要な要因です。

たとえば、以下のようなケースで取り扱いが分かれます。

●管理開始初期の物件:管理を開始してから3か月以内の物件を計算に含めない会社があります。
●退去決定物件:退去が決まっている物件でも、まだ入居者がいる限り入居中として扱う会社と、退去決定時点で空室扱いとする会社があります。
●リフォーム期間:退去後の原状回復工事期間中の部屋を空室としてカウントしない会社や、工事完了後から空室期間を計算し始める会社もあります。

これらの定義の違いによって、同じ入居状況でも数%程度の入居率の差が生まれる可能性があります。管理会社から入居率の報告を受ける際は、どのような基準で算出しているかを確認することが重要です。


入居率の平均と推移

全国の入居率平均を理解することで、自身の物件の状況を客観的に判断できるようになります。ただし、データの出典によって大きく異なる数値が示されているため、注意深く分析する必要があります。

実は、入居率の全国平均については2つの大きく異なるデータが存在します。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)の調査では、全国平均入居率が95%以上と報告されています。一方、総務省統計局の住宅・土地統計調査によると、直近10年の全国賃貸住宅の空室率は17〜18%台で推移しており、これから算出される入居率は80%程度となります。

この大きな差の理由は、日管協データが「入居率最大化を目指している層」である会員企業のデータであるため、実際の市場全体よりも数値が高く出る傾向にあることです。



【2023年度】全国の入居率の平均

日管協総合研究所「第28回賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」によると、2023年度の全国平均入居率は以下のとおりです。

●委託管理物件:94.2%
●サブリース物件:97.0%

地域別では、首都圏(委託管理95.1%、サブリース97.8%)、関西圏(委託管理93.9%、サブリース96.5%)、その他(委託管理92.9%、サブリース96.7%)となっており、都市部ほど入居率が高い傾向にあります。



【2018年度~】全国の入居率の推移

過去5年間の入居率推移を見ると、大きな変動はなく安定して推移していることが分かります。

全国平均(委託管理):2018年度94.1%→2019年度95.3%→2020年度96.4%→2021年度96.2%→2022年度95.3%→2023年度94.2%

この推移から、コロナ禍を経ても入居率は大きく変動せず、都市部での賃貸需要が安定していることが読み取れます。


入居率を高めるためのポイント

入居率の向上は単に家賃を下げるだけでは解決しません。多角的なアプローチで物件の魅力を高め、長期的に安定した経営を実現することが重要です。

募集方法を見直す

現代の入居者探しは、インターネットが中心となっています。来店者の約80%がインターネット経由とされているため、オンライン集客の充実が不可欠です。

ポータルサイトやSNSに掲載する物件情報は定期的に更新し、鮮明な写真やわかりやすい物件説明を盛り込むことで、内見希望者の増加につながります。とくに、間取り図や周辺施設の写真を加えることで、暮らしをイメージしやすくなる点がポイントです。

加えて、管理会社の自社サイトにも詳細な物件情報を掲載し、設備や住環境の魅力を積極的にアピールすることが重要です。動画やバーチャル内見ツールを導入すれば、遠方の検討者にもアプローチできます。

募集条件を緩和する

入居希望者を増やすためには、条件面でのハードルを下げる工夫も有効です。

とくに初期費用は大きな負担となるため、敷金・礼金の減額や廃止、さらにフリーレント(一定期間の家賃無料)を設けることで、契約への心理的障壁を減らします。

また、ライフスタイルの多様化に合わせて「ペット可」「楽器可」「DIY可」といった条件緩和を行うと、これまで取り込めなかった層にリーチできます。とくに単身者や若年層に人気が高く、物件の魅力を差別化する要素にもなります。

さらに、外国人入居者の受け入れ体制を整えたり、保証会社を活用して連帯保証人を不要とする制度を導入したりすれば、検討者の選択肢は大幅に広がります。

こうした募集条件の柔軟化は、一時的に収益を抑える側面もありますが、長期的には空室率の低下による安定収益につながります。投資効率を高めるための重要な戦略といえるでしょう。

魅力的な内装や装備を整える

入居者のライフスタイルやニーズの変化に対応したリフォーム・リノベーションは、物件の競争力向上に直結します。

単身者向けには、高速インターネット(Wi-Fi)、宅配ボックス、在宅ワーク対応のワークスペースなどが人気です。ファミリー向けには、システムキッチン、浴室乾燥機、十分な収納スペースが重視されます。

とくにキッチン、浴室、洗面台、トイレなどの水回り設備は、入居者の満足度に大きく影響するため、優先して検討すべき箇所です。

共用部をきれいに保つ

内見時の第一印象を決める共用部の清潔さは、入居率に大きな影響を与えます。

エントランス、廊下、階段、エレベーター、ゴミ置き場、駐輪場など、入居希望者の目に触れる場所はとくに注意が必要です。日常清掃だけでなく、外壁の洗浄、植栽の手入れ、照明器具の点検・交換なども定期的に実施しましょう。

入居率の高い管理会社に変更する

現在の管理会社のサービスに不満がある場合や、空室が長期間改善しない場合は、管理会社の変更も有効な解決策です。

優良な管理会社を見極めるポイントとして、管理戸数と客付け実績、入居者募集方法の多様性、地域特化型のネットワーク、24時間緊急対応などの総合的なサポート体制を確認しましょう。

京阪神エリアにおいては、地域に根ざした長年の実績とネットワークを持つ管理会社を選ぶことで、エリアの特性を活かした効果的な入居者募集が可能になります。

まとめ

入居率は不動産投資の成功を左右するもっとも重要な指標のひとつです。入居率には3つの計算方法があり、管理会社によって定義も異なるため、提示された数字を鵜呑みにするのではなく、その背景を理解することが重要です。

入居率の改善には、募集方法の見直し、条件緩和、内装・設備の充実、共用部の管理強化など、多角的なアプローチが必要です。そして何より重要なのは、信頼できる管理会社との長期的なパートナーシップです。

日住サービスでは、京阪神エリアに特化した豊富な実績とネットワークを活かし、オーナー様の不動産経営を総合的にサポートいたします。入居率の改善や安定した経営の実現に向けて、賃貸管理から大規模修繕まで、一貫したサービスをご提供しています。

不動産投資でお悩みのことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。


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