冬暖かく、夏涼しく。年中快適な住まいの作り方

2023.12.17一戸建て
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年中快適な住まい

 

「家のつくりようは夏を旨とすべし」(徒然草)。
蒸し暑い日本の夏には開放的な家のつくりがよいと、兼好法師は説きましたが、近年の猛暑を思えば、そう悠長なことを言っていられません。
大きな開口部があっても、住宅密集地では風通しは限定的、入ってきても涼風とは限らず、窓を開けたらかえって室温が上昇する可能性も。
一文は「冬は、いかなる所にも住まる」と続きますが、真冬の冷え込みは、健康を損なう恐れもあり“いかなる所にも住まる”とは言い難いものです。
夏も冬もエアコン使用が一般的となった昨今、住宅の冷暖房効率を高める機能や仕様が注目されています。今回は、マイホームを年中快適な空間にする家作りやリフォームのポイントについて考えます。

 


 

 

重要なポイントは「断熱性・気密性」

 

高断熱

 

夏涼しく冬は暖かい家づくりの重要なポイントは「断熱性」と「気密性」です。

家の断熱性が高いと冬は冷たい外気の影響を、夏は暑い外気の影響を受けづらくなります。また室内のエアコン等でつくり出した冷暖気を外に逃がすのを防いでくれます。断熱性の高い家は、少しの冷暖房で快適に過ごすことができます。

 

断熱性とあわせて大切なのが気密性です。気密性のない家とは、すき間の多い家のことです。すき間が多いとそこから外の空気が入ったり、エアコン等でつくり出した冷気や暖気が外に漏れたりしてしまいます。このためいくらエアコンを稼働させても快適な室温を保つことが難しくなります。

 

◆窓の断熱性・気密性を高める

 

窓の断熱

 

窓は熱の出入りが一番大きな箇所。窓は小さければ小さいほど、少なければ少ないほど家の断熱性や気密性は高くなります。

 

窓の大きさや数、位置は、通風・採光や眺望などの効果を考えて厳選するのが良いでしょう。その上で、窓ガラスは断熱性の高い複層ガラスを選択。Low-Eガラスなら「断熱性の高いもの」と「遮熱性の高いもの」の2種類から選べます。寒冷地なら日射熱が得られるように敢えて遮熱タイプでないものを選ぶ、猛暑が厳しいなら日射の強い南側の窓だけ遮熱タイプにして他はそうでないものにするなど、用途に応じて選択することができます。

 

また、窓本体は熱伝導率の低い木製にして、外壁に被さるように取り付けます。通風を目的としない明かり取りの高窓などは、気密性を高めやすいFIX窓にするのも良いでしょう。

 

 

◆壁・床の断熱性を高める

 

壁の断熱

 

 

外壁や床に入れる断熱材は、原料の違いで「鉱物系」「石油系」「自然系」に分けられます。断熱性能では、硬質ウレタンフォームなど石油系のものが高いとされていますが、いくら性能の高い断熱材を選んでも、それを隙間なく敷きつめて家を覆わなければその性能は発揮できません。断熱性能は施工の精度に影響されます。

 

施工方法は大きくわけて3つ。

「充填断熱」は、柱と柱の間など、躯体内の空間に断熱材を充填する工法。後述の外張り断熱工法と比べてローコストで施工できることが多く、ほとんどの種類の断熱材を使用できます。

「外張り断熱」は、柱の外側に断熱材を張り付ける工法。柱を外側から覆うため、充填断熱と比べて柱部分からの熱の出入りがなく断熱性に有利です。また充填断熱とくらべて施工しやすい工法です。

「付加断熱」は、充填断熱と外張り断熱の両方を施工する工法。コストは増えますが、充填断熱や外張り断熱だけよりも断熱材を厚くできるため、断熱性能を高めやすくなります。

 

◆屋根の断熱性を高める

 

屋根の断熱

 

屋根も、充填断熱と外張り断熱などで断熱性を高めれば、夏場は日射熱の侵入を防ぎ屋根の日照りが抑えられ、冷房効率が良くなります。そして冬場は暖房の熱を逃げにくくして、部屋の保温性を高めることができます。

 

小屋裏の外側にある屋根に断熱材を取り付ける「屋根断熱」に対して、天井部分に断熱材を入れる「天井断熱」という手段もあります。コストと効果のバランスを考えて選ぶことができます。

 

◆家の表面積を小さくすればエアコン効率UP

 

家の表面積

 

 

断熱性・気密性を高めたうえで、家を凹凸の無いコンパクトなデザインにしたり、天井を低くして、家の高さを抑えたりするなど、家の表面積を小さくすれば、熱のロスをより抑えることができます。天井を低くすることも含め、ひと部屋の体積を小さくすれば、エアコン効率が向上します。

 

室内形状が複雑で入り組んでいると室温にムラが出来やすくなるので、間取りをシンプルにするか、床暖房やシーリングファン、全館空調などの設備機器と組み合わせるなど工夫が必要になってきます。

 

深い軒や庇、瓦屋根も効果的

 

軒と庇

 

 

 

夏、室内を快適な室温環境に保つには遮熱も大切です。遮熱とは、日射熱を遮蔽して室温の上昇を抑えることです。

 

遮熱には「軒(のき)」、「庇(ひさし)」が有効です。大きく張り出すように屋根を設け、軒を深くすれば、外壁や窓に熱い日差しが当たるのを軽減できます。

 

屋根材には、瓦のほか化粧スレート(カラーベスト)や金属など様々なものが使われています。化粧スレートや金属屋根は比較的に安価で軽量などのメリットがありますが、断熱性能がより高いのは瓦屋根です。一方、近年では断熱加工をした金属屋根なども一般的になっています。

 

 

素材の工夫で快適な空間に

 

自然素材

 

 

フローリングを無垢材に、壁を漆喰にするなど、自然素材を採り入れることで、夏場は湿気を吸い取りさらっとした空気にし、冬は乾燥を抑え室内を保湿するなどのメリットがあります。湿度は体感温度を左右するので、夏涼しく、冬暖かく感じる空間を作ることができます。

 

蓄熱素材の活用も効果的です。蓄熱とは、熱をためておき必要な時に放出する機能のことをいいます。蓄熱機能を備えた塗り壁材は、冬は日中の太陽光から熱を蓄えておき、夜になり気温が低下すると、日中に蓄えた熱を放出して室内を暖めます。反対に夏は夜間に冷気を蓄えて、日中の温度上昇とともにその冷気を放出して部屋を冷やします。

 

 

最後に

 

自宅を快適空間に

 

高断熱・高気密住宅だと、夏の暑さや冬の寒さなど外気の影響を受けにくく、年間を通して快適に過ごせます。また、熱い陽射しを遮る深い軒を設置する、床は無垢材・壁は漆喰……のように自然素材を採用するなど、構造や素材を工夫して過ごしやすい住空間にアプローチすることもできます。

これを機に、ご自宅の断熱性や気密性について見直してみてはいかがでしょう。

 

 

タグ : 中古 一戸建て 不動産 住みかえ 選び方 新築 注文住宅
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