中古マンションを購入する際は、長期修繕計画と修繕積立金の状況の確認を!
2024.03.17マンション
ここ最近、築年数の古いマンションで、十数年ごとに行う大規模修繕に必要な修繕積立金が不足するケースが増加しています。テレビ番組で取り上げられているのをご覧になった方も多いのでは。修繕積立金不足で十分な修繕ができなければ、マンションの老朽化が加速し、長く快適に住み続けられなくなる可能性が高くなります。
修繕積立金の不足を知らずに中古マンションを購入した場合、それを補填するために急激に修繕積立金が上がったり、一時金が必要になったりするなど、後から負担を強いられることになるかもしれません。中古マンション購入の際は、事前にそのマンションの「経済状況」の確認が必要なのです。
修繕積立金が不足する2つの主な理由
分譲マンションを購入すれば、「区分所有者」としてマンション管理組合の一員になります。それぞれが共用部分の大規模修繕工事に備えて、管理組合に支払うのが修繕積立金です。
徴収方法には、当初は金額を低く設定し、段階的に引き上げていく「段階増額積立」と、初めから一定額を徴収する「均等積立」があります。が、実際のところ「段階増額積立」の採用が多くを占めます。
そこには、マンション分譲の際に、「段階増額積立」で当初の徴収額を低く抑え、購入希望者を増やしたいという業者側の思惑もあるとみられます。しかし、修繕積立金の額は、マンションの仕様や設備の耐用年数などから、必要となる費用を計算した長期修繕計画を基にして決められるものです。当初の低い徴収額のままでは必ず不足が生じるので、段階的に増額することになるのですが、徴収額を引き上げる場合には、住民が参加する総会での議決が必要となります。負担が増えることから合意が得られず据え置いたなら、修繕積立金不足はますます積みあがっていくことに。また、たとえ住民の合意が得られた場合であっても、徴収額の引き上げ幅が大きければ、かえって滞納を増やす結果を招く恐れがあります。
もし、積立金残高が修繕計画に対して不足しないように収支計画が立てられていたとしても、10年、20年先の修繕費用を正確に予想することは難しいものです。実際、近年では、建築資材の高騰や人手不足による人件費の上昇で、コストはかなり上振れしています。こうした点も修繕積立金が不足する主な要因と考えられます。
マンションの「経済状況」を確認する3つの方法
国土交通省の新築マンションの修繕計画に関する調査(2021年)では、最終的に見込まれる修繕積立金の徴収額は初期の徴収額に比べ平均で3.6倍に上昇しており、中には10倍を超えるマンションもあったということです。
もし、購入した中古マンションが、徴収額が低く据え置かれたままですでに修繕積立金不足に陥っていたとしたら、早かれ遅かれ大きな負担を課せられることになります。
そのような事態を避けるために、マンションの「総会議事録」などから経済状況を把握したり、マンション管理計画認定制度に認定されているか、マンション管理適正評価制度の評価がどの程度か確認したりすることが大切です。
1.管理組合と総会議事録
修繕積立金を管理するのは、マンション住人全員が加入する管理組合です。管理組合では、1年に1回総会が開かれ、総会議事録が作られます。管理規約や管理組合収支報告を見れば、積立金の状況だけでなく、管理組合が適切に機能しているかも知ることができます。
総会議事録は区分所有法のなかで、「利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、議事録の閲覧を拒んではならない」と定められています。「利害関係人」には、購入希望者も含まれますので、閲覧することができます。仲介業者に頼んでみてください。
2.マンション管理計画認定制度
2022年4月には、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」に伴い、「マンション管理計画認定制度」が導入されました。
マンション管理が一定の基準を満たしていると評価されれば、適切な管理計画を持つマンションとして認定が受けられます。この制度の認定を受けるためには、マンション管理組合が主体となり長期修繕計画の見直しなどを実施して、自治体に申請する必要があります。
「修繕積立金総額に基づいて算定された修繕積立金平均額が著しく低額でない」ことも認定基準に含まれているため、この制度導入により、認定基準に適合するべく修繕積立金が見直される契機にもなっています。認定を受けたマンションは、管理が行き届いていると評価され、資産価値の向上につながる可能性も高くなります。
3.マンション管理適正評価制度
マンション管理業協会の評価制度として「マンション管理適正評価制度」もスタートしています。
こちらもマンションの管理状態や管理組合の運営状況を評価する制度で、評価カテゴリーごとにポイントで点数が付くというシステムです。管理組合収支についても評価項目があり、修繕積立金の設定も評価対象となっています。
さらに、国土交通省は、マンションの修繕積立金など管理計画のガイドラインの見直しに向けて、専門家による検討会で議論を始めています。検討会では、修繕計画や積立金について適切な目安を設けることや、徴収額を当初から高めに設定し、同じ金額を徴収していく方式を導入することなどについて議論を取りまとめ、新たなガイドラインを示したい考えです。
最後に
築年数の経過したマンションで、十数年ごとに行う大規模修繕で必要な修繕積立金の不足が課題となっています。修繕積立金が不足している場合、早晩に徴収額が急激に増えたり、適切な修繕が行えず、老朽化が早まってしまったりする恐れがあります。
中古マンションを購入するなら、マンションの管理内容(認定の有無)や、管理組合の長期修繕計画とそれに備えた積立金のストック状況を事前に確認するようにしましょう。
株式会社日住サービス
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