民法改正で、越境してきたお隣の樹木の伐採がOKに?!

2023.05.14一戸建て
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樹木の越境

隣の庭木が大きくなって、枝葉が塀を越えて自分の敷地へ。落葉や害虫が気になるから、私が切っていいのかな? お隣は長らく空き家だし、ここは自分の敷地だし。ええい、切っちゃえ!

これ、NGなんです。なぜなら、木はお隣の所有物だから。

伐採するにはルールがあります。これらに関する法律が2021年に改正となり、その法律が2023年4月に施行され、かなり〝実用的〟になりました。

今回は、その改正されたルールについて取り上げます。

 

 

樹木の越境問題についてのルールが一部改正

民法改正

 

民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)の改正で、樹木の越境問題についてのルールが一部変わりました。これにより隣地から樹木等の枝が伸びてきた場合、これまでより越境された側が切りやすくなりました。枝の越境は、管理されていない空き地などでよく見られ、すでに困っている方には朗報でしょう。

これまでのルールと新ルールを比較してみます。

参考:法務省 民法等の一部を改正する法律案(令和3年4月28日公布)

 

 

◆改正前と改正後

改正前と改正後

 

【改正前】

1 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

【改正後(2023年4月1日施行)】

1 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

三 急迫の事情があるとき。

4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

 

越境してきた樹木の枝は伐採してOK?!

伐採

 

今回の民法改正で、越境された土地の所有者は「木の所有者に枝を切り取らせる必要がある」という原則を維持しつつ、次の3つの条件に該当する場合は、枝を自ら切り取ることができるようになりました。

 

 

◆越境された側が伐採できる3つの条件

伐採の条件

 

条件1:催告しても竹木の所有者が切除しないとき

竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときには、越境された土地の所有者は枝を切り取ることができます。ここで言う「相当の期間」とは、竹木の所有者が枝を切除するために必要と考えられる期間です。個別の事案によって期間は異なりますが、一般的には2週間程度の期間を必要とするものと考えられます。

 

条件2:竹木の所有者または所有者の所在を知ることができないとき

竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときにも、枝を切り取ることが認められます。隣地の所有者の行方が不明であり、建物は空き家のまま、庭木は荒れ放題に放置されているような状況において、調査を尽くしても竹木の所有者または所有者の所在が不明であるケースです。調査の必要性は、個別の事案によって異なりますが、基本的には、現地の調査に加えて、不動産登記簿、立木登記簿、住民票などの公的な記録を確認し調査を尽くしても、竹木の所有者またはその所在を知ることができなかった場合に、伐採が認められます。

 

条件3:急迫の事情があるとき

急迫の事情があるときにも、催告をすることなく、越境された土地の所有者の枝の切除が許されます。たとえば、台風によって木の枝が折れ、隣地に落下して建物を毀損する恐れがあるような場合、などが該当します。

 

 

越境してきた枝を伐採するときの注意点

敷地境界線

 

① 原則的には竹木の所有者に枝を切除してもらう

頼めば切除してくれることがほとんどですが、「自由に切っていい」と言われることがあるかもしれません。その場合は、想定外の切られ方をした、強要されたなど、後々のトラブルを防ぐためにも「同意書」などをもらっておきましょう。伐採を業者に頼む場合は、その支払いなどについても、あらかじめ話し合いをしておきましょう。樹木の伐採において正当性がある場合は、料金の支払いをその所有者(お隣の人)へ請求することができますが、所有者側が承知しないケースもないとは言えません。

② 隣地の枝の越境によって、自己の所有地に実害があるかどうか

枝の越境による実害がない場合は、切除を求めると権利の濫用(民法1条3項)になる可能性があります。越境された側にも、一定の慎重さが求められます。

③ 隣地との境界線がハッキリしているかどうか

隣地との境界が不明瞭な場合は、先に境界を確定しなければ越境を明らかにできません。筆界確認(土地の境界線について、双方の所有者で合意を交わすこと)は費用がかかり、かつ容易に決着しないケースもありますので、事前に境界を明確にしておきましょう。

 

 

最後に

近所づきあい

 

近年、空き家が増えています。「お隣の樹木が伸びてきて困っているけど、連絡がつかない」という場合は、改正民法で行動が起こしやすくなります。お隣に人が住んでいて、樹木の枝がご自分の所有地に越境してきた場合は、これまで通り、頼んで切ってもらうのが一番!普段からお隣の人とコミュニケーションを取って、良い関係を築いておきましょう。そのうえで、自身も自宅の庭木がお隣の敷地まで伸びる前に剪定するなど、適切な管理を心がけましょう。

 

 

 

 

 

タグ : 一戸建て 土地 改正民法 空き家 隣地
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